人口統計とAIで、渋滞予測が精度アップ!モバイル空間統計でみる正月の人口分布

いよいよ2017年も最後の1週間となりました。年末年始、ふるさとで過ごされる方も多いのではないでしょうか。

この時期、毎年ニュースになるのが帰省ラッシュ、Uターンラッシュです。なるべく渋滞を避けられるよう、カレンダーや過去の渋滞実績に基づく高速道路の渋滞予報が出されます。しかし実際のところどのくらい渋滞するのか、抜けるのにどのくらい時間がかかるのかは当日の天候などの条件にも大きく左右されます。

当日正午時点の人出に基づき午後の渋滞を予測

「人の動きを元に、AIで渋滞を予測する」そんな実証実験を、高速道路を管理するNEXCO東日本とNTTドコモが始めました。NTTドコモが開発した「AI渋滞予知」を利用し、携帯電話ネットワークの仕組みを使ったリアルタイム人口統計と、NEXCO東日本が持つ過去の渋滞実績および当日の帰省情報を掛け合わせることで、人工知能が渋滞を予測します。

AI渋滞予知のイメージ(報道発表資料より)

実証実験は東京湾アクアラインの、海ほたるパーキングエリアから川崎方面に向かう上り線で行われています。正午時点の房総半島一帯における人出に基づき、14時から24時までの渋滞を予測し、NEXCO東日本のウェブサイト「ドラぷら」で配信します。

実験期間は2017年12月2日から2018年3月31日までを予定。期間中は、渋滞予測と同時に、渋滞予測時間帯に木更津アウトレットや木更津市内の店で利用できる「ヨル得」クーポンを配信します。渋滞時間に周辺の店舗の利用を促すことで、渋滞緩和と周辺地域の活性化をはかります。

予測の精度が大幅に向上

AI渋滞予測は、人口統計と渋滞の関係を学習した人工知能を通じて渋滞を予測します。その日の人口統計を入力情報として利用するので、従来の過去の渋滞実績を用いた「渋滞予報カレンダー」に比べると、天候やイベント開催などの影響も予測に取り入れることができるという特長があります。今回の実証実験に先立ち、2015年1月から2017年4月までのデータを元にAI渋滞予知による予知精度を評価したところ、渋滞予測の見逃し率(予測していない時に渋滞が発生した)、空振り率(予測していたのに渋滞が発生しなかった)とも、大幅に改善したのです。

AI渋滞予知は「その日のデータ」を元にするため、当然ですが前日に知ることはできません。一方で、過去の渋滞実績を用いた予測は、毎年およそ2か月前から発表されています。前日までの計画立案には渋滞予報カレンダー、実際の移動にはAI渋滞予知を活用することで、ドライバーはよりスムーズなドライブができ、渋滞を避けるドライバーが増えることで渋滞の緩和も期待できます。

三が日の中で混雑を避けて初詣するには…?

AI渋滞予知で使用するリアルタイム人口統計は、NTTドコモの携帯電話基地局が周期的に把握している基地局ごとのカバーエリア内端末数に基づき、地点ごとの人口を推測する「モバイル空間統計」のデータを利用しています。モバイル空間統計で東京のメジャーな初詣スポットである明治神宮と浅草寺の周辺エリアの三が日の状況を分析したデータを見つけたので紹介します。

まず、混雑する時間帯は、元旦の深夜から明け方の時間帯を除いて、3日間とも8時以降に来訪者が増え始め、14時にピークを迎えており、どの日も午前中より正午過ぎからの方が混雑していました。大みそかからそのまま新年の初もうでをする人が一段落した後は、「三が日ぐらい朝はゆっくりしたい」と思う人が多い様子です。また、面白かったのが、昼間の時間帯は元旦よりも2日、2日よりも3日の方が、人が多かったこと。元旦は家でのんびりして、休みの後半にはアクティブに動く人が多いというのも、なんとなくうなずけます。

「浅草寺エリア、 明治神宮」時系列の人出チャート (両エリアの合計データ・報道発表資料より)

こうした結果から、「混雑を避けて初詣に行くには、元旦の朝8時から10時頃がねらい目」ということが分かります。2016年の三が日のデータですが、人の行動はそうそう変わらないと思いますので、きっと2018年のお正月にも役立つのではないでしょうか。

帰省ラッシュ・Uターンラッシュはどこからどこへ?

また、AI渋滞予知で使用しているのは端末の時間帯別の位置の情報だけですが、モバイル空間統計では携帯電話の契約者情報から、居住地別、年齢別、性別などの人口分布を推計することもできます。NTTドコモでは、モバイル空間統計を使って人の動きを可視化し、動画やグラフにまとめた「みえる化ラボ」を公開しています。

この中で紹介されている「年末年始に各都道府県民はどこへ行く?」というグラフでは、首都圏、大阪、名古屋、福岡などからその他の地域に多くの人が移動していること、首都圏や大阪からは日本全国に人が移動しているけれど、福岡、広島、宮城などは近隣県への移動が多いことなどが分かります。

渋滞しても、ラッシュに巻き込まれても、故郷の家族や懐かしい友人と過ごす年末年始はかけがえのない時間です。事故に気を付けて、良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いします。

 

【参照情報】
(お知らせ)NEXCO東日本とNTTドコモ、東京湾アクアラインにおいて「AI渋滞予知」による渋滞予測実証実験を開始
位置情報ビッグデータで初詣の行動を分析
みえる化ラボ「年末年始に各都道府県民はどこへ行く?」

 

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「タイムカプセル」を仕事に活用する営業マンが増えている?注目の地図作成アプリ「Diground」

お勧めのお店やスポットを集めたオリジナルマップを簡単につくれるアプリ、Diground。地図上の希望の場所を長押しすることで、写真やコメントを「カプセル」として地図上に埋め込むことができるアプリです。

写真やテキストをマップ上の「カプセル」に詰め込む

Digroundでは、マップ上に立てるピンを「カプセル」と呼びます。簡単な操作で写真やテキストなどをカプセルに詰め込むことができます。カプセルにはさまざまなデザインが用意されており、選ぶのも楽しいですが、自作の画像や写真でオリジナルピンを作成するのも簡単にできます。

ユニークなのが、カプセルには「◯年後にならないと開封できない」「◯メートル圏内でないと開封できない」という、時間指定と距離指定ができることです。地図の情報を共有するだけではなく、実際にその場所の近くまで行かないと中身が見えないカプセルや、タイムカプセルのように未来にならないと開けないカプセルを作成することができます。

地球上から地図上へ、埋める場所を変えてみた

それもそのはず、このアプリ、元々はタイムカプセルから発想されたものなのです。企画者がタイムカプセルをやろうとして、埋める場所が見つからず困った経験から、「地球上が無理なら地図上に埋めればいいんじゃないか」と思いついたことからこのアプリを開発したそうです。たしかに、タイムカプセルが眠っている何十年もの間、ずっと掘り返されることがない場所を探すのは大変かもしれません。

土に埋めるタイムカプセルは一度掘り返して開ければ終わりですが、Digroundのカプセルは何度でも開けることができます。もともとのアイデアの通り、タイムカプセルとして時間が経ってから開けてみたり、近くまで行って中身の写真や文字を集める「スタンプラリー」を作成したり、さまざまな遊び方た楽しめます。アプリの通知機能をオンにしておくと、カプセルを開封できる距離まで近づいたら通知してくれるので、スタンプラリーもはかどりそうです。もちろん、時間指定も距離指定もされていないカプセルは、いつでも見ることができます。

意外な人たちが食いついた!

やがて、このカプセルを仕事に活用するユーザーが現れました。訪問販売など、普段外回りをしている営業マンが、自分の訪問先情報を管理するために使い始めたのです。お客様ごとの訪問記録をテキストと画像でまとめてカプセルに格納しておきます。パソコンをわざわざ立ち上げて日報を入力するよりも簡単なので、書類作成に使う時間を本来の外回りに仕えます。

さて、Digroundのもうひとつの特徴が、簡単に特定の人とだけ共有するマップが作れることです。友達と一緒にカプセルを配置しながら旅行の計画を立てたり、宝探しゲームを作ったり、といったことが簡単にできます。

Digroundを利用している営業マンの人たちの中にはマップ共有機能を「チーム営業」に活用する事例も出てきました。地図上に情報を入力して共有できる無料アプリとして、注目されたのです。カプセルの作成や追加入力はリアルタイムで他の営業マンにも通知されるので、コメントでアドバイスしたり、激励したりといったことができます。

また、通知機能を設定しておくと、他の担当者が近くまで来た時に通知され、この近くにどんなお客様がいるかが分かります。訪問記録が残っているので「そろそろ消耗品の補充が無いか訪問してお伺いをしてみよう」といったことができます。何かあればコメントを残しておくことで、本来の担当者は的確にフォローができ、チーム営業の効率が上がります。

サービスを運営する株式会社ディグランドにも「営業マップとして利用できないか」「営業向けに最適化してほしい」という問い合わせが数多く寄せられ、ユーザーの意見を聞きながら営業管理の効率化につながる機能を開発。「営業マンに最適化した、地図にメモする顧客管理アプリ」というコンセプトで2018年2月に新たなサービス開始を予告しています。

2017年マップランキングを発表!

ディグランド社は、アプリDiground内でユーザーが作成した公開地図を共有するMAPまとめサイト「Diground」を運営しており、アプリユーザー以外もマップを利用することができます。先日発表された2017年のMAPランキング上位には、韓流スターが実際に訪問した場所を集めたマップや、「宇都宮の焼き芋マップ」「あきたいぬ像のおしり 全14スポット一覧マップ」など、タイトルを見ただけで興味をそそられてしまうマップがたくさん。これから年末年始にかけてはイルミネーションマップや初詣マップ、春にはお花見マップなども登場しそうですね。

気になりますよね。あきたいぬのおしり。大館サテライトオフィスが提供しています。

ディグランド社では、観光大使・地域おこし協力隊支援プランとして、特別なアカウントを発行し、PCからのMAP作成や効果測定、アプリ内での有料MAP販売などの機能を提供しています。「タイムカプセル」の仕組みで営業マン支援と観光支援、異なる利用シーンで高機能なマップを提供するユニークなサービス、位置情報を活用したビジネスのヒントが詰まっていそうです。

※画像は全て報道発表資料より

【参考情報】
地図上に埋める「タイムカプセル」異例の2,000件突破。年末の振り返り新定番。
営業マンのための「地図にメモする」顧客管理アプリ 2018.2リリース
国内No.1のMAPまとめサイトが2017年アクセスランキングを初公開

身近な「困った」を解決する 自治体アプリで住みやすい街づくり

「家の前の道路に穴が開いている」「いつも通る道の街灯が切れて暗い」…街の環境改善に役立つアプリが、少しずつ自治体に広まっています。

なかなか伝わらない身近な「街の不具合」

生活道路の補修や落書きの消去、ゴミの収集などは自治体の役割ですが、限られた職員が街中を隅々まで常に見回ることは困難です。気づいた住民が役所に通報することになるのですが、そのためにはいくつかのハードルがあります。

まず、目の前の問題は役所のどの部署が担当しているのかがそもそも分かりません。また、電話で通報しようにも、平日昼間の、役所の窓口が開いている時間にかけるというのがそもそも大変です。さらに、場所を正確に知らせるのも、状況を正確に伝えるのも、なかなか困難です。そんな思いをしてようやく自治体に伝えたとしても、いつまで経っても状況が改善しないことも珍しくありません。「どうして困っているのに放置されているんだ」と不満が貯まります。

一方で、役所の立場になってみましょう。持ち込まれるさまざまな困りごとの中から緊急度を判断して対応していく必要があるため、現地を調査する必要があります。その結果、自分達で対応したり、業者に依頼したりといった方針を決めて順番に対応していくわけですが、その過程が住民には見えません。また、同じことを複数の住民から通報されると、その応対に手間を取られます。がんばっているのに住民には伝わらず、仕事が増えていき、こちらも不満が貯まります。

いわば、どちらも幸せになれない状態だったわけです。

はじまりはイギリスから

2007年、イギリスのmySocietyという非営利団体が始めた「FixMyStreet」という仕組みは、住民が街の「困りごと」を投稿する口コミサイトでした。利用者同士の助け合いによる問題解決を促すと共に、mySocietyは、投稿を見て、自治体に代わりに通報するという活動をしていたのです。

FixMy Street 画面イメージ(プレス向け資料より)

スマートフォンが普及すると、mySocietyは「FixMyStreet」というアプリを開発しました。スマートフォンのGPSとカメラ機能があれば、写真を位置情報付きでいつでも投稿できます。同時に、mySocietyは自治体向けに、「FixMyStreetの投稿に返信できる仕組み」を有料で提供しました。自治体にとっても、住民がアプリで通報してくれれば現地調査が楽になり、また対応状況を逐一知らせることで「仕事をしている」ことを分かってもらえます。「無視されているわけではなく、対応に時間がかかっているだけ」ということが分かれば、住民の不満もおさまるというものです。

フルスクラッチで日本版FixMy Streetを開発

やがてこの仕組みは世界各国へと広がっていきました。日本でも、イギリスのFixMy Streetに触発された札幌のダッピスタジオがフルスクラッチでFixMyStreet Japan(http://www.fixmystreet.jp)を開発し、2012年から運用を始めています。

2017年12月現在、FixMyStreet Japanをの自治体機能を利用している自治体は、愛知県半田市、大分県別府市、福島県郡山市、奈良県生駒市、福島県いわき市、埼玉県熊谷市、長野県安曇野市、群馬県渋川市、新潟県妙高市、福島県須賀川市の10自治体。他に、仙台市などで実証実験が行われています。

FixMy Street Japan ウェブサイト

書き込みはゴミの問題、道路の問題、落書き、ユニバーサルデザイン、街灯の故障、その他のカテゴリーに分類されています。投稿を見ると、道路の舗装はがれ、カーブミラーや電柱の傾き、側溝の詰まり、伐採が必要な木や草むら、落書き、ゴミの不法投棄など、さまざまな困りごとがあるのが分かります。

これに対して、自治体の人が「調査します」「場所が分からないので再度情報を下さい」といったやりとりを経て、最終的に解決したら解決後の現場写真と共に解決報告をアップして終了となります。地図も表示されており、投稿されてまだ未対応のもの、対応中のもの、解決済みのものが色分けして表示されます。投稿・閲覧はスマートフォンからもパソコンからも可能です。

FixMy Street Japn アプリ(AppStoreより)

独自アプリを開発する自治体も

FixMyStreetの仕組みから着想を得て、独自のアプリを提供する自治体もあります。最も早い取り組みは千葉市の「ちばレポ(ちば市民協働レポート)」です。自治体が通報を解決するだけでなく、情報を見た市民が自発的に協力して対応した記録も投稿できるのが特徴で、2014年8月のサービス開始以来、2017年12月までで4500件以上のレポートを受け付け、4300件余りの課題を解決しました。困りごとのレポートだけでなく、桜や紅葉など、季節ごとにテーマを決めたお勧めスポットのレポートも受け付けています。神奈川県相模原市の「パッ!撮るん」、大阪府泉佐野市の「まちレポ泉佐野おせチョ~」など、地元のIT企業と協力して独自のアプリを開発する自治体も出てきました。

「ちばレポ」アプリ(AppStoreより)

また、千葉市は、ちばレポのノウハウを他の自治体にも連携すべく、2017年10月から2018年3月までの予定で、「次世代型市民協働プラットフォーム”My City Report”」の実証実験を室蘭市、足立区、墨田区、沼津市と共に実施中です。

アプリによって困りごとを可視化することで、行政に頼るだけでなく住民が協力して問題を解決していく、「住民参加の街づくり」の仕組みとして注目です。投稿されている情報には全て位置情報がついているので、ジオフェンスで「危険個所」をプッシュ通知したり、「お勧めスポット」を知らせたりすると、より安全で楽しい街づくりに役立ちそうですね。

【参照情報】

FixMyStreet
FixMyStreet Japan | 地域・街の課題をスマホで解決
ちばレポ:ちば市民協働レポート |トップページ
My City Report
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