【GPSのブレ】
我々がお世話になることも多いGPS。地図を見る時や位置情報ゲームを遊ぶ時などなにかと便利ですが、多少のブレが生じるのが玉に瑕です。
このブレの原因は、
(1)衛星数が少ないことによる誤差
(2)電離圏による誤差
によるものです。
また、従来のGPSはアメリカ所有のものであることなどから、防衛上の理由も含みかねてより日本独自の測位システムの登場が待たれていました。
日本以外でも、ロシアの「GLONASS」、中国の「北斗」、ヨーロッパの「ガリレオ」、インドの「NavIC」など、独自の衛星航法システムが運用されています。
【準天頂衛星「みちびき」】
そんな中、日本が準備を進めてきたのが準天頂衛星システム(「QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)」)「みちびき」です。
2018年8月現在では既に1~4号機の4機が打ち上げを完了しており、2023年度をめどに7機体制になる計画です。
準天頂衛星の打ち上げにより、日本上空に常に複数の人工衛星が滞在することになり、位置測位の精度が向上すると言われています。
【どこまで位置測位の精度が向上するのか】
ここで気になるのは、一体どこまで我々のスマホの位置測位の精度が向上するのか、という点。我々が現在使用しているスマホは、みちびきからの電波を受信しているのでしょうか?
実はみちびき対応製品リストの中にも取り上げられている通り、iphone 6s以降の機種やGalaxy S8など、かなり多くのスマホがみちびきでの位置測位に対応しているんです。
つまり、一時期噂になっていたように「みちびきが本格稼働すれば、数cmレベルの精度で位置情報を取得できる」……?
みちびきの公式サイトでも「センチメータ級測位補強サービス(CLAS……シーラス)」をうたい、誤差数cmという精度で位置測位ができるとしています。
結論から言うと、「現状のままで我々のスマホが」この恩恵を受けることはできません。
センチメータ級測位補強サービスを利用するには、国土地理院が約1300箇所、約20km間隔で全国に設置した電子基準点(富士山や沖ノ鳥島にもあります)へのシステム対応が必要となります。この電子基準点の絶対位置と衛星での測位値との誤差を算出、補正することで数cmレベルでの位置測位が可能になります。
基本的に我々が所持しているスマホでは、電子基準点を利用する為の「L6信号」に対応していないのです。
数cmレベルでの測位自体は、既に農業や除雪での自動運転などでも利用されています。
【どこまで位置測位の精度が向上するのか】
では、スマホでのGPS位置測位については、これまでと何も変わらないのでしょうか?
これもまた違います。みちびき対応製品リストでも示されている通り、比較的新しいスマホであればL1C/A信号に対応しています。
この信号を利用することによって、GPS衛星測位の補強を受けることが可能です。
前述の「衛星数が少ないことによる誤差」は、マルチパス(山やビルによる電波の反射)や人工衛星の低仰角配置によるものですが、みちびきの打ち上げで高仰角に位置する人工衛星が増加することにより、測位の安定性が向上します。
また「電離圏による誤差」についても複数の信号を送受信したり(2周波受信機などが必要)、1周波受信機であっても対象領域を日本に限定したパラメータ補正をすることで精度向上を想定しています。
みちびきサイトでの「[実証] 都市部でのQZ1測位モード比較」でも示されている通り、GPS単体とQZS(みちびきのL1C/A信号)との組み合わせの測位精度の図を見れば一目瞭然、圧倒的な精度の差が生まれています。
ビル群の合間を縫った経路にも関わらず、その測位精度は数m程度の誤差に収まっています。
そもそも、日常生活レベルであれば、cmレベルでの位置測位はほぼ必要でないと言っていいでしょう。
またみちびきでは、災害時における避難所情報を収集する【衛星安否確認サービス「Q-ANPI」】や、地震や津波、テロなどの危機管理情報、避難勧告などの発令状況をみちびきから送信する【災害・危機管理通報サービス「災危通報」】などがサービスとして想定されています。
みちびきは2018年度から正式サービス開始予定とされています。
みちびきが7機体制となり、より我々の生活が便利になることに期待しましょう。
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