宅配ボックス、コンビニ受け取り、もっと便利に使うには?

先日とりあげたAmazon IoTボタンを筆頭に、「気軽にいつでも注文できる」のが便利なネット通販。しかしその仕組みを支える物流システムが、今、限界に近づいています。最大手事業者のヤマト運輸は、荷物の急増で配達を担うドライバーが限界に近付いているとして、配達時間帯指定区分の見直し、当日配送からの撤退も検討していることが報じられています。

【再配達抑止が課題だが有料化には抵抗感】

中でも問題となっているのが、「再配達」です。国土交通省の調査によると、配達される荷物のうち約2割は一度で届けることができず、再配達が必要となっています。物流事業者にとっては、同じ場所を何度も訪れることによる配達コストが増大するだけでなく、再配達に指定されるのは帰宅後の夜になることが多いため、ドライバーにとっては長時間労働の大きな要因となります。

ヤマト運輸では、再配達を減らすために、クロネコメンバーズ会員に在宅率の高い時間帯をあらかじめ登録してもらうよう呼びかけるなどの取り組みを行っていますが、加えて再配達の有償化も検討中であると報じられています。

利用者の方も再配達を減らすことが必要だということは認識していながらも、再配達有料化にはやはり抵抗があるようです。「しらべぇ」の調査によると、配送業者の「再配達有料化に賛成」と答えた人は36.5%に留まり、半数以上は有料化に反対していることが判明しました。

【効果的だが設置が難しい宅配ボックス】

再配達を減らすのに効果的だとされているのが宅配ボックスです。パナソニックと福井県あわら市の共同プロジェクト「宅配ボックス実証実験」では、中間報告として宅配ボックス設置により再配達率が49%から8%に減少したことが報告されています。宅配ボックスでの受け取りは全体の35%に達しており、宅配ボックスの効果が再配達を減らすのに大きく寄与していることが分かります。

宅配ボックス設置の効果(パナソニック報道発表資料を元に作成)

また同実証実験では、再配達が減ったことで、宅配ドライバーの労働時間は65.8時間削減、CO2は約137.5kg削減という成果を上げています。やはり再配達を減らすことは問題解決に大きく寄与するのです。

実証実験での宅配ボックス設置例(パナソニック報道発表資料より)

だからといって、「では、日本中の家に宅配ボックスを置けばいい!」というわけにはいきません。特に都心部の集合住宅では、分譲であれば管理組合等での合意と管理費の出費が必要ですし、賃貸であれば家主にそれ相応の費用負担がかかります。

【そうだ、コンビニに置こう!】

そこで現在、検討されているのが、コンビニエンスストアへの受け取りロッカー設置です。今でも事業者によっては「コンビニ受け取り」というオプションを設けているのですが、コンビニの現場からは「荷物の置き場所を取られる」「オペレーションが煩雑になる」といったことから、あまり歓迎されていないのが実情でした。しかし、設置したロッカーに事業者が荷物を入れ、受取人が荷物を出すという運用であれば、コンビニの負担は今に比べると格段に小さくなります。

自宅以外の場所に設置したロッカーを利用して荷物が受け取れるサービスとしては、楽天が駅に設置した専用ロッカー「楽天BOX」や、ゆうパックの荷物を郵便局のロッカーで受け取れる「はこぽす」、契約事業者の荷物を駅や事業者営業所などに設置したロッカーで受け取れる「PUDOステーション」などのサービスがありました。

駅で受け取れる宅配ロッカー(京急電鉄 報道発表資料より)

しかしやはり自宅に近い場所にある「コンビニ」で受け取りたいというニーズは高く、ジャストシステムが2017年4月に実施した調査では「商品受け取りロッカーの設置場所」として「コンビニエンスストア」を挙げた人が57.1%に上りました。

【他者にロッカーを開けられないために、スマホを活用】

自宅以外の場所にロッカーを設置する時の課題は2つあります。ひとつは間違いなく受取人だけが扉を開けられるような仕組みです。前出のジャストシステムの調査では、商品受け取りロッカーを利用する時の要望として、「他者にロッカーを開けられてしまわないようにしてほしい」という要望が65.8%と最多となっています。

現在提供されている各種サービスでは、開錠に必要なパスコードをメールで利用者に送信するタイプのものが多くなっていますが、専用アプリを利用してスマホで開錠する製品も最近は開発されています。その一例がエスキュービズムの「スマート宅配ボックス」で、海外渡航者向けレンタルWi-Fiルーター大手のグローバルWi-Fiのサービス「スマートピックアップ」に採用されています。事前予約した利用者は羽田空港国際線ターミナルで、カウンターに並ばずロッカーからWi-Fiルーターを受け取ることができます。

ボックスの利用が特定の配送事業者に限定されない仕組みとしては、ブロックチェーンを利用して安全な受け渡しを行う宅配ボックスの実証実験が行われています。2016年12月にIoTパートナーコミュニティ(事務局:株式会社ウフル)のワーキンググループ活動としてセゾン情報システムズ、GMOインターネット、GMOグローバルサインが共同で発表したもので、ブロックチェーンの「改ざんできない」という特長を生かして、正しい相手への荷物の受け渡しをスマートコントラクト(特定の要件を満たした時に自動実行される契約)として安全に行うものです。

【「荷物をちゃんと取り出してもらう」ための位置情報】

そしてもう1つの課題が、ロッカーの荷物をできる限り速やかに引き取らせる仕組みです。一家に1台専有できる戸建て住宅の宅配ボックスと異なり、戸数よりも少ない数しかないマンションの宅配ボックスなどでは、先に入っている荷物が受け取られないと、どんどんロッカーが埋まっていきます。ロッカーがあっても空きがなくては、結局再配達が必要になります。コンビニや駅などの公共スペースのロッカーではさらに問題は深刻です。

とはいっても、日中に最寄りのコンビニのロッカーに荷物が届いた通知を、何時間も経ってから帰宅する時に確実に覚えているほどには、人間の記憶はあてにできません。確実に受け取らせるためには、そのコンビニの近くにいる時に「あなたの引き取りを待っている荷物がありますよ」と知らせることです。ロッカーに荷物をチェックインすると同時に、仮想的なビーコンをセットして、受取人が近くまで来たらプッシュ通知が届くような仕組みがあれば、荷物の受け取り忘れは飛躍的に減るはずです。

【待っててくれないなら追いかければいいじゃない】

ところでここまでの話は、どこか決まった場所に届く荷物をいかに受け取るかという話でしたが、全く別の発想で行われているのがヤマト運輸とDeNAによる「ロボネコヤマト」プロジェクトです。神奈川県藤沢市の一部で4月17日から始まった実験では、任意の時間と場所を指定して車と「待ち合わせ」をして、専用車両に積まれたロッカーの中から荷物を取り出します。

ロボネコヤマト 専用車両(EV)

車両は当面、ドライバーが運転しますが、両社では自動運転によるサービス実現を目指しています。人力ではとても対応しきれないサービスでも、ロボットでうまく回れば便利なサービスになりそうで、期待が持てます。

私達の生活を便利にしてくれている物流システムをこれからも支えるために、情報技術活用の知恵が試されているのです。

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【参照情報】

・宅配の再配達削減に向けた検討について(2016年11月25日 国土交通省)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/pdf/020_02_01.pdf
ヤマト運輸がAmazon当日配送から撤退へ!再配達有料化も検討(2017年4月14日 しらべぇ)
https://sirabee.com/2017/04/14/20161090821/
ECサイトの配送に関する意識調査 商品受取専用ロッカーを過半数が認知するも、利用増加率は5.3%(2017年4月12日 Marketing Research Camp)
https://marketing-rc.com/report/report-ecsite-20170412.html
福井県あわら市、パナソニック株式会社による 「宅配ボックス実証実験」中間報告 宅配ボックス設置により再配達率49%から8%に減少 (2017年2月24日、パナソニック株式会社)
http://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/02/jn170224-1/jn170224-1.html
楽天BOX
http://event.rakuten.co.jp/r-box/
はこぽす(日本郵便)
https://www.post.japanpost.jp/service/hakopost/
PUDOステーション (Packcity Japan)
http://www.packcity.co.jp/our_service
オープン型宅配便ロッカー≪PUDOステーション≫を設置いたします!12月15日(木)より京急線の5駅でサービス開始! (京急電鉄)
http://www.keikyu.co.jp/company/news/2016/20161212HP_16177NN.html
エスキュービズム スマート宅配ボックス
https://usable-iot.com/smartdeliverybox/
GMOインターネットグループの2社と、セゾン情報システムズ  ブロックチェーンとIoTを活用した実証実験を実施 (2016年12月20日 GMOインターネット株式会社)
https://www.gmo.jp/news/article/?id=5542
自動運転社会を見据えた次世代物流サービスの実現をめざす「ロボネコヤマト」プロジェクト
http://www.yamato-hd.co.jp/news/h29/h29_06_01news.html

 

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