100m先の交差点の飛び出しをリアルタイムに警告 自販機ネットワークが実現する超センサーの未来

日本に来た外国人が驚くことの一つが、街中のいたるところにある自動販売機(以下自販機)なのだそうです。日本自動販売機工業会の統計によると、2016年末の自販機および自動サービス機の普及台数は約494万台。両替機やコインロッカーなどの自動サービス機を除いても、約365万台の自販機が国内にあることになり、中でも飲料の自販機は247万台を占めています。いま、この自販機が、街の見守りネットワークの拠点として注目されています。

自販機あるところに電源あり

自販機が基地局として注目される理由は3つあります。ひとつは、自販機がある場所には必ず電源があること。見守りネットワーク構築時に必ず問題となる「電源問題」を考えなくて良いのは大きなメリットです。

2つめは、特に都市部ではある程度の密度で分布していること。自販機と自販機の間の距離が短いため、弱い出力の電波でも必ずどこかの基地局と通信できるよう、エリアを構成できます。

3つめは、自販機は位置がしっかりと管理されていること。設置場所の住所が緯度経度だけでなく建物の高さまで細かく把握できるので、受信電波の強度と合わせて、位置をより詳細に特定できます。

位置情報をきめ細かく把握

2017年6月から渋谷区と東京電力ホールディングス(以下東電HD)が始めたIoT技術を活用した見守り実証実験は、高齢者や子供にビーコン電波発信機を搭載したキーホルダーなどを持たせ、ビーコン受信機を設置した基地局で電波を受信してその位置を把握します。

見守りサービスのイメージ(報道発表資料より)

基地局は公共施設や東電HDの設備の他、キリンビバレッジの協力により、渋谷区内の清涼自動販売機にも設置し、見守り拠点として活用します。また、実験協力者のスマホに無料アプリをインストールして、ビーコンの電波を受信する基地局として活用することで、都心部である渋谷でどのくらいの数の基地局が必要になるかを検証します。

人が持つビーコン発信器(左)と、自販機に取り付けるビーコン受信機(右)(報道発表資料より)

検知ポイントをあらかじめアプリで設定することで、その場所の近くを受信機が通過するとアプリに通知が届くよう設定できます。子供の通学路の途中に何カ所か設定して、きちんと通過しているかを確認したり、塾や友達の家など、その日の行先に合わせて検知ポイントを設置して安全を確認できます。また、自宅の周囲に複数検知ポイントを設定しておくことで、認知症の高齢者が外に出てしまったことをいちはやく検知することもできます。

見守るだけでなく「つぶやく」IoT対応自販機

国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)とアサヒ飲料は、位置情報を受信するだけでなく、「見守り」「交通安全」「観光」等のリアルタイムな地域情報を発信する「見守り自販機」の実証実験を、墨田区を中心としたエリアで6月から実施しています。自販機に基地局としてはBLEビーコンとしてセンサー情報をWi-SUNというIoT向け通信規格で再送信する機能をもったWi-SUN/BLEハイブリッドビーコン端末を搭載しており、自販機どうしをメッシュ状に結ぶことで、自販機が情報を中継しながら中継点で「つぶやく」IoT対応自販機を実現しました。

IoT無線ルーター搭載自販機(報道発表資料より)

墨田区のような都市部では、自動販売機の基地局をメッシュ状につなぐことで、地域を面でカバーするネットワーク網が完成します。NICTのシミュレーション結果では、墨田区内の自動販売機約70拠点を単一のメッシュネットワークでむすぶことで、墨田区の42%を覆うことができました。自販機同士の通信にはWi-SUNを主に使いますが、一部は携帯電話網も使用し、より広域をカバーするネットワークが構成できるようにしています。

センサーと組み合わせて人の情報を知らせる

NICTが目指すのは、メッシュネットワークに面上に覆われた地域の中を移動する車両が、メッシュネットワークから地域内の情報を受け取ることでさまざまな情報支援を得る「つぶやく」IoTです。今回の実証実験では、墨田区内のおよそ50カ所の自動販売機にWi-SUNビーコン発信器を設置し、同区を主な事業エリアにする飲料補充車両3台とタクシー65台にWi-SUNルータを搭載し、車両の位置情報や情報の受発信実験を行いました。

車両にWi-SUNルーターを設置(報道発表資料より)

将来は、子供や高齢者など見守りが必要な人に、BLEとWi-SUNビーコンの両方を持たせることで、自販機ネットワークがビーコンを持った人の位置や「走っている」「倒れている」といった情報を検知し、ネットワーク全体で共有することができるようになると期待されます。

つぶやくIoTでできること(報道発表資料より)

「行方が分からなくなった高齢者が近くにいることをタクシードライバーに通知する」「100メートル先の交差点の近くで子どもが走り回っているから飛び出し注意」「この角を右に曲がったところでタクシーを待っている人がいる」といったことが、街の自販機ネットワークでできてしまうようになるかもしれません。まさに、街全体での「見守り」の仕組みが完成しようとしています。

街の自販機にビーコンがつくのが当たり前になれば、よりきめ細かなジオフェンスの設定も可能になり、39Geoplaとしても、いろいろなことができそうですね。

【参照情報】
東京都渋谷区での「IoT技術を活用した見守り」開始について ~高齢者と子どもの安心・安全なくらしを目指し、自治体と企業が連携します~
「この先注意して!」 見えない先をIoT対応「見守り自販機」が“つぶやき”ます ~自動販売機を活用した「地域貢献型IoTサービス」のフィールド実証実験の開始~

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カテゴリーIoT