移動する人や車両の位置をリアルタイムに把握する仕組みとして手軽なのがGPSです。しかし、工場や倉庫は大きな建屋の中にあることが多く、GPSの電波がそもそも入りません。そこで最近は、ビーコンを利用して位置情報を把握する仕組みが実用化されています。
人や車両の位置が知りたい理由
工場や倉庫で、人や車両の位置を知るためのソリューションが必要とされる理由はいくつかあります。まず一つは、作業の安全のため。作業中、どの場所にどんな車両がいるのか、急転回や急ブレーキなど危険な運転が頻繁に行われる場所はないか、その近くで人が大勢作業をしていて接触する危険は無いかなど、データとして収集することで、危険な場所を明らかにすることができます。
もうひとつは効率化のため。作業時間帯なのに車両や人が移動も作業もせず遊んでしまっている時間帯はないかを明らかにすることで、稼働率を高めることができます。また、一つの作業をするために無駄な移動をしていないか、動線を確認することもできます。
作業記録と位置情報を合わせて、棚の配置を最適化
日通総合研究所が提供する倉庫作業ツール「ろじたん」は、スマホアプリとウェブで倉庫内の作業を記録するサービスです。管理者がウェブで「入荷検品」「棚卸し」「ラベル貼り」「ピックアップ」などの作業を選択するだけで、作業者のスマホにインストールした「時間計測アプリ」にボタンが表示されます。あとは、予め設定した時刻にスマホが振動するので、作業者は現在自分が行っている作業のボタンをタップすることで、時間ごとに作業内容を記録する「作業時間計測データ」が自動作成されます。

アプリを起動すると、シリアルID が付与されたビーコンから発信される信号を、アプリが自動的に1分間隔でキャッチします。キャッチした位置情報は、作業時間計測データとあわせてサーバーに送信され、ウェブ上で確認できます。
取得したデータを分析ツールに取り込むと、作業時間と位置情報の分析が可能になります。
取り込んだ倉庫レイアウト画像上にスタッフの位置を表示して滞留状況を可視化したり、出荷口から滞留位置までの距離と滞留回数の関係から、レイアウトを評価することができます。
自律航法と組み合わせて屋内と屋外の位置情報をシームレスに取得
日立製作所がサービス提供を開始した「Tracking View」は、ビーコンに加えて加速度、角速度、地磁気の3つのセンサーを組み合わせて、位置情報だけでなく速度・加減速・旋回の情報も取得し、移動距離や方向などの挙動を演算します。ビーコンだけで測位するのに比べると、少ないビーコン数で高精度な位置情報が取得できます。また、屋外ではGPS測位で位置情報を補足することで、屋内と屋外の位置情報をシームレスに取得できます。
事業化の第一弾として、フォークリフトのリース事業にTracking Viewを組み合わせ、リース先で運用されているフォークリストの運転状況を元に、台数や配置の最適化や、資材配置などの現場レイアウト提案に活かします。また、車両のスピードや急加速・急減速・急旋回などの情報もわかりますので、安全運転の指導や、路面レイアウトの改善にも利用できます。
ジオフェンスを利用した作業支援でより安全に
さて、工場内にビーコンが配置されるということは、ジオフェンスも利用できるということです。工場内に複数のジオフェンスを設置し、チェックイン/チェックアウト時に「今いる場所」を通知するだけで、似たような風景が続く倉庫内で迷子になりにくく、新人でも安心して作業ができそうです。また、立ち入り禁止場所に作業車両が入り込む事故も未然に防止することができるでしょう。
また、プッシュ配信するメッセージを、集計された作業時間計測情報に基づき更新していくことで、その場所近辺での作業が順調か、滞っているか、他の場所に比べてどうかといった状況をリアルタイムで作業者に知らせることができます。予定通り進んでいれば良いですが、極端に乖離がある場合は、何か問題があるかもしれません。作業者から管理者へ、タイムリーな報告・連絡・相談ができれば、作業を安全確実に進めることが可能になります。
ジオフェンスとビーコンを活用して、より安全な現場を実現することができそうです。
【参照情報】
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