「ラストワンマイル」の交通手段として最近注目されるシェアサイクル。中国大手2社の日本参入や異業種からの参入など、競争が激化しています。
必要な時だけ乗る「シェアサイクル」
人の移動とは、出発点から到着点まで、人が位置を変えることです。歩いて移動できない距離を移動する場合は、乗り物を利用します。
日本の、特に都市部では、鉄道やバスなどと公共交通機関と徒歩の組み合わせによる移動が一般的ですが、日常生活における移動は不便を抱えています。駅から目的地までの距離が歩くには微妙に遠い、バス路線があっても本数が少なく乗りたいタイミングで乗れない、直線距離で結べばさほどでもない距離が鉄道の路線の関係で遠回りしなくてはたどり着けないといった不便を感じることはよくあります。
そんなニーズにうまくはまるのが「シェアサイクル」です。バスやタクシーに乗る代わりに、手ごろな料金で自転車に乗り、目的地に着いたらそこで返却する。という仕組みです。とはいえ、実際には「借りた場所に返してもらえない」自転車をどう管理するかという問題があり、なかなかサービスは始まりませんでした。
GPSとクラウドで実現が可能に
観光地などで自転車を時間貸しする「レンタルサイクル」と違い、「乗りたい時に乗れて、好きな場所で降りられる」を実現するためには、自転車を置いておくステーションを密度高く配置できることが重要です。しかしそこに係員がいなくてはいけないのではコストがかかりすぎますから、無人で利用できなくてはいけませんし、どの自転車を誰が借りて、今どこにあるのかということを常に把握できている必要がありました。
これを実現したのが、GPSとクラウドです。自転車の位置はGPSで管理し、鍵の開閉は利用者に知らせるパスワードで行います。自転車の位置と鍵の開閉状況とその時の利用者をクラウド上で管理すれば、ステーションに人がいなくても、どの自転車がどこにあるのか、その自転車は誰かが利用しているのか空いている状態なのかを常に把握できます。

この仕組みで東京都千代田区や港区などで自治体と共に会員制シェアサイクルの実証実験を行っていたNTTドコモは、2015年2月に「株式会社ドコモ・バイクシェア」を設立しました。ステーションにGPSと通信装置を搭載した電動自転車を配備し、利用者はスマホアプリやおサイフケータイ、交通系ICカードを利用して開錠でき、乗った自転車は目的地近くのステーションで返却できます。
2017年10月現在、ドコモ・バイクシェアのサービスは東京都内10区の他横浜市、仙台市、広島市でも提供。さらに、東京都内でも千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・江東区・渋谷区の7区で相互に乗り入れできます。この便利さが好評で、サービス開始の翌年2016年には、利用者数が前年(2015年)の3倍に増加。2017年もさらに増え続けています。
文字通りの「乗り捨て自由」な中国のシェアサイクル
同じようなことは同じようなタイミングで世界中で思いつく人がいるようで、中国でも2015年頃からMobike、ofoという2社がシェアサイクルのサービスを開始。瞬く間に参入者が増え、現在は中国全土で30社以上が入り乱れてサービスを提供しているのだそうです。
日本のサービスとの大きな違いは、中国のシェアサイクルには貸し出し・返却用の「ステーション」という概念がないということ。貸し出し可能な自転車がある位置はスマホのアプリ上で表示されるので、そこへ行き、スマホのアプリでQRコードを読み取るだけで開錠して利用開始。目的地でそのまま降りて鍵を掛ければ返却完了というわけです。

路上に置いた自転車は誰かがまた乗っていくこともあれば、回収車がやってきて駅の近くや繁華街など利用者が多い場所へと運んでいくこともあります。


大手2社のMobike、ofoは海外にも事業を展開。そしてこの2社は、日本にも進出を決めています。先にサービスを開始したのはMobike。本社を福岡に設置しましたが、最初に2017年8月からサービスインしたのは札幌でした。

さすがに中国のような「路上でどこでも乗り捨て自由」ルールは日本では適用されておらず、コンビニエンスストアやドラッグストアなどの敷地内に設置した「Mobikeポート」に設置・返却することが推奨されています。とはいえ、実際には、アプリを利用してMobikeポートが無い位置で自転車を見つけることができるようだという報告もあります。
もう一方のofoは、東京と大阪からのサービス開始を予定しています。2017年10月に東京都内で行われたイベントで試乗会を行いましたが、実際に利用できるにはもうしばらくかかる模様です。また、Mobike、ofoの進出を受けてか、メルカリとDMM.comが2018年初頭をめどにシェアサイクル事業参入を発表しています。来年は日本でもシェアサイクルサービスの選択肢が一気に増えそうです。
ステーションの見つけやすさが鍵になりそう
利用者の立場になると、シェアサイクルは「乗りたい場所で借りられて、降りたい場所で返せる」ことが最も重要です。路上乗り捨て自由にはできない日本の事情を考えると、貸し出し・返却を行うステーションがいかにきめ細かく配置されているかという点が選択時のキーポイントになりそうです。
その点、東京でいえば都内で既に300カ所以上のステーションを配置しているドコモ・バイクシェアが優位そうです。
ですが実際のところ「どこにステーションがあるのか」が地図だけではいまいちわかりにくいのも事実。ステーションにジオフェンスを設置し、アプリを起動したらステーション近くでプッシュ通知が飛んでくるようになっていれば利用しやすくなりそうです。
まだまだ都内にはコインパーキングやコンビニ・ドラッグストア・スーパーマーケットの駐輪場、オフィスビルの敷地の片隅、あるいは店舗の店頭スペースなど、自転車をとめようと思えばとめられるスペースはたくさんあります。もちろん東京や札幌以外にも、名古屋、大阪、京都、福岡、仙台など、シェアサイクルのニーズがありそうな都市は他にもあります。ジオフェンスを上手く利用すれば、「昼間だけ利用可能」「週末だけ利用可能」といったシェアサイクルのステーションも提供できるかもしれません。来年はシェアサイクルステーションをめぐる新しいビジネスが流行るかもしれませんね。
【参照情報】
・千代田区とコミュニティサイクルサービス「ちよくる」を開始
・世界最大のスマートバイクシェアサービス「モバイク」が2017年8月23日(水)ついに札幌市にて日本初ローンチ! 札幌市内でローンチイベントを開催
・「Mobike」(モバイク)乗車レポート、レンタル・返却方法や「乗り捨て」に関する注意など
・都内7区に広がる自転車シェアリング。利用回数3倍のワケは? その裏側を探ってみた
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